家庭内アンサンブル推進委員会
ケーナの設計1



塩ビ管で、穴の間隔を一定にし、穴の大きさ、内径、肉厚をそれぞれ3種類づつ作りました。それぞれ3℃刻みで違う温度の日に測定しました。計測は、チューナーを目視しないで、同じ息の強さで5分以上の時間をあけて2回行い、平均を取りました。一本で7つの音でオクターブの変化も取りましたので、合計で1148回もピーピー吹いたわけです。(実際はその何倍も)

この測定値は、竹の状態により基本設計をどのように変えるか。そして、ずれた音を修正するためにはどこをいじればいいのか。オクターブの跳躍がきれい2倍音にならないときはどう修正できるのか。などに答えを出してくれるはずです。

25℃の時のデータを下に示します。


このグラフは、ケーナの1オクターブと2オクターブの音程の違いを%で表しています。
1〜7の数字は上の写真の塩ビ管の穴を全部開けたら1、全部押さえた時が7の音程です。
(図3B)の黄色のデーターは、全部押さえた1オクターブ目の音を100%として、そこから
オクターブ跳躍し2倍音を出すと、201%の周波数になる。つまり2オクターブ目がやや
高めに出るということです。208%というのは、半音高い音が出ています。
200%に真っ直ぐに線が続くのが理想的な笛になります。



ご覧のように、あまりきれいな曲線にはなっていません。ケーナは吹き方で大きく音程が変わるため、測定ノイズだと思います。しかし、2回計測し、平均を取っているため、その2回の値が大きく離れていない限り、データーの取り直していません。また、このデーターはuchiのデーターで一般的なものではありません。今回の傾向とまったく逆の感想をもっていらっしゃる製作者の方もいます。



全体的な傾向
(図3のA)のように、一般的には音程が下がるとオクターブ比は下がります。特に歌口に近付くと急にオクターブ比が上がるポイントがあります(図3C)。管長365mmに対して歌口から175mm(47.6%)の穴がそうです。モンターニャさんが最初の穴は、管長の半分になるようにしているとおっしゃっていたのは、この急激な変化のポイントを避けるためだと思います。私の作るケーナはファ♯の穴がちょうどこの位置にきます。これは大きな問題です。

また、そのポイント以外では、管が太くなり肉が厚くなるほど変化が大きくなります。18mmを超える管の調整が難しいのはこのためでしょう。

(図2指穴12mm)だけは特異的なフラット傾向を示しています。これは、測定ミスの可能性もありますが、もしかしたら相性がいいのかもしれません。今後さらに検証が必要です。

指穴の大きさ
図1〜3で、指穴が大きくなれば、オクターブ比が上がる弱い傾向が見られます。細い管ほど顕著に悪化します。指穴の大きさでオクターブ比が大きく変わるのは内径よりも、肉厚であることが分かります。肉厚の竹を使うときは、穴を大きくするほどオクターブ比が上がるようです。

内径
(図1)16mmではオクターブ比は下がり、18mmでは上がります。

管尻
この塩ビ管は管尻の処理をせずに切りっぱなしにしています。このため、見かけ上大きな穴があいていることになり、オクターブ比は一気に上がります。管尻加工の影響は一番下の穴のみで全体には影響を与えてていない。

本当のケーナでは節に穴を開けているので、この上昇はありません。


ケーナのテーパーはどのようにつけたらよいのでしょうか。。
サックスもクラリネットも下が広がるテーパーがかかっています。フルートも歌口の部分には下広がりのゆるいテーパーがかかっています。これは、オクターブ比を合わせるためでしょう。

肉厚の厚いクラリネットやオーボエはオクターブ比を広げないために小さな指穴をあけ、肉厚の薄いサックスは大きな指穴。フルートも薄いので管の太さに比べれば、だいぶ大きな穴を開けています。


全閉のオクターブ比を上げないために、ケーナ管尻に小さな穴を開けますが、西洋楽器は管尻を伸ばし、その長さが全体に影響を与えないためにラッパ状に広げています。

どの楽器も、歌口に一番近い穴は極端に小さくなります。これは、歌口に近くなると、極端にオクターブ比が悪くなるために、大きくできないためでしょうか。

クラリネット、サックス、オーボエは閉管楽器です。ケーナ・フルートは開管楽器ですから同じ結論には達しません。ケーナと同じ閉管のリコーダーは、極端な下ずぼまりで、指穴はどれも極小です。下すぼまりで、大きな指穴はケーナだけですね。なんででしょ?わかりません。


・下広がりのテーパー

・下の指穴ほど大きく

・一番上の穴は極端に小さい

・同じ音程でも、肉厚が薄い楽器ほどほど穴は大きくなる

・歌口の直前が一番テーパーが強い



この測定結果から、ケーナにどのようなフィードバックが考えられるでしょう。

 指穴の位置が半分よりも上にゆく場合は、オクターブ比を広げないために指穴をかなり小さくする必要がある。他の指穴も下にゆくにしたがい、若干大きくなるはず。ケーナの場合は、管尻がすぼまっているので、一番下の穴は小さくてもよい。

 下広がりのテーパーがよいかもしれない。テーパーは直線的なものでなく、歌口に近い部分で絞り、後 はゆるい広がりにするか、広げなくてもよい。

 オクターブを合わせるのに、ちょうどよい内径と、ちょうどよい肉厚がある。

 一番下の指穴から管尻までは、適度な距離が必要。切りっぱなしでも一番下の穴までの影響しかないが、短くして穴を小さくすると、その上の音にまで影響が出る可能性がある。

この中でも、いままでのケーナの常識では間違っていることが二つあります。それは下広がりのテーパーと、指穴の大きさを変えるということです。特に上の3つの穴が同じ大きさでは、絶対にオクターブ比は合いそうにありません。

この結果は、私のケーナ製作の悩みを解消してくれそうです。2オクターブのソがとても高くなる、1オクターブのシが低くなる、これがどうしても直せずにいました。この結果が竹のケーナに再現性があるのなら、穴の大きさを変えるだけで解消します。

データーや計算で得られるのは、傾向だけです。塩ビ管で18mmが一番よいからといって、竹のケーナでも18mmが一番よいとは限りません。でも、これらの試験は、経験と感を効率よく獲得するためのとても役にたつと思います。


この結果は私だけのデーターから導きました。ご覧になったら、ぜひ御自身でのデータをとってみてください。まったく違う結果が出ると思います。それをを教えていただければ幸いです。


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