家庭内アンサンブル推進委員会
ジョイントケーナの製作
ケーナにジョイントが必要かどうかは難しい問題です。楽器として考えれば温度は奏者によって変わる音程を調整するジョイントは必ず必要なものです。でも、中南米のオリジナル楽器にはジョイントはありません。音程を気にしないで、弦楽器に合わせてもらうのが正しい方法かもしれません。

市販のケーナは1本1万円程度です(安い!)。ジョイント加工をすると、その倍の値段でもできないと思います。価格からいっても主流にはならないでしょうから、自作派の特権として挑戦してみてください。
まず、本体側にパイプを入れ込む工程です。アルミとステンレスのパイプは外形が16mmと19mmのものがケーナ用で使えそうです。19mmを使うと、当然ですが、竹の内径19mmの溝が必要です。溝きりには、チタンコーティングフリードリル(藤原産業 品番16632)を使います。竹を真っ直ぐ保持しながらドリルを押し進めると、きれいな溝が入ります。とても危険な作業なので、作業用手袋をしてください。手作業なので、多少のずれは覚悟してください。。

19mmのドリルで開けるとパイプがスカスカ入ってしまう緩めの穴があきます。ここにタップリと木工ボンドをぬったパイプを埋め込みます。ここがキチキチですと、温度変化によりヒビが入りやすくなりそうです。木工用ボンドよりも、コーキングのほうが竹のためにはよいかもしれません。しかし、硬度低い接着剤を使うと音質に悪い影響が出そうです。


電動工具がない場合は、下の方法を使えばすべて手作業で作ることが出来ます。
歌口側の溝を作ります。ここは、コルクが入る分大きくなります。内径20mm必要なのですが、適当な電動工具がありません。そこで、尺八作りからヒントをいただき、内径を彫刻等で削ります。

削るのは簡単ですが、溝の最後にきれいな段差を作る工具がありません。そこで、自作工具の登場です。上の写真は「竹内径毛引」鉄の棒の先に小さな刃の付いた突起をつけました。棒と刃を竹の内部に入れて、溝を切ります。ストッパーが付いていますので、一定の距離で竹の内部に溝が引けます。
このように、竹の内側に入れて、ぐるっと回せば丸く線が入ります。ホームセンターに売っている毛引は太すぎて竹の内側に入りません。この工具は金属加工用の工具がないと作れませんが、似ているものは作れます。木の棒の先に、カッターナイフ刃を接着したものでもできるのではないでしょうか。

また、販売されているものでも、竹の内側に使える毛引があります。上の写真は15000円前後するとても高価なものです。これと同じ構造で、刃がひとつのものが、2000円で売っています。探してみてください。
これから削る内径の大きさに線を引きます。これを目安に彫刻刀で溝を掘ります。ちょっと練習が必要です。
金属パイプにコルクを巻きます。コルクは薄いシートを売っていますので、それを切って使います。安いシートは目が粗く、曲げるとぼろぼろになってしまいますから、目の詰まったものを選んでください。左のコルクはボロボロになりました。右はなんとか使えます。今は、クラリネットジョイント用コルクを、修理屋サンから分けてもらっています。ヤマハでも取り寄せられます。パイプには木工用ボンドで接着できます。接着した後は、テープを巻いて固定します。
最初は、きつすぎるくらいでないと後からゆるくなります。コルクにはコルクグリスをたっぷり塗ってください。コルクグリスは楽器屋さんで売っています。コルクグリスがない場合は、どんなグリスでもかまわないですから塗ってください。


内径加工用ドリル

機械を使うと、より正確な加工ができます。

ジョイント式ケーナや、内径の加工をするには市販のボール盤では長さが足りません。それだけのために旋盤を買うのも気が引けます。

そこでこんなものを作りました。木の枠組みにボール盤をボルトで固定し、万力で竹を縦に固定できるようになっています。
内径加工
竹は自然の素材ですから、内部は複雑に変化しています。これがケーナ作りの難しさ。そこで、足りないところは埋めて、出ているところは削ってしまえば、いいものが出来るに違いない!と考えたのがこの方法です。
内部を埋める素材はいろいろあります。石膏、コーキング材、メジトップ(ozanさん伝授)、トノコと漆。私は、補修用木工パテが一番簡単なので使っています。硬化後は、切削・クギ打ちができるくらいの強度が出ます。棒を使って、竹の内側にパテを塗りこみます。これが以外に難しい。

次に、電動ドリル用のエキスパンジョンロッドにアングルビッドを取り付けます。普通長いのドリルですと、曲がった竹の中を進んでくれません。また、管尻の部分が円柱に切削できないので、この形のドリルが役に立ちます。竹の曲がりに応じて削る方向を変え、管尻まで達します。
竹の節抜きにも使えます。節の部分は固いので、なかなか平らに出来ません。これですとでこぼこも取れますから、中節を使ったケーナも出来ます。
ちゃんと削れているいるか、試しに何箇所か割ってみましたが、どの部分でも均一の内径が得られました。太い竹をパテだらけにするより、ほんの少し盛ってある程度いいようです。このドリルでは内部がピカピカには削れないので、磨きが必要です。この加工で、どんな竹でもエンビ管のような均一な素材になると思っていましたが、現実はだいぶ個体差が残るようですね。
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