普通にしていては、ロングトーンはつまらない練習です。同じ音を、ひたすら吹いているだけですから。でも、いろいろ考えながら吹くと面白くなります。私が注意している点を並べてみました。

・唇の形
高い音を出すときは、口角を引きます。強く引くと息の通り道は細くなりますが、息の流れが乱れます。両脇へ軽く引きながら、唇は柔らかい状態を保つには、どのくらいの力で引けばよいのでしょうか?
内側の粘膜が少し出るくらいがいいのでしょうか?硬い部分との境目がいいのでしょうか?いろいろ試します。

・口腔内(※1)
口の中の体積はとても重要です。体積の大小は音の立ち上がりに関係します。大きいとゆっくり、小さいと早くなります。このため、低い音の場合は、オーバーブローをさせないように、大きく。高い音の場合は、小さくすると吹きやすくなります。音をやさしくリリースしたときは少し大きしたほうがやりやすいようです。

そして、歌口の振動に最も近い共鳴体ですから、出している音に一番きれいな振動を増幅する体積を探します。

・のど
(※1)気管
のどの体積は口腔内と違い、姿勢や角度で大きく変化します。うつむき加減では小さく、顔を上げると大きくなります。のどと口腔を一番大きくしたのが、上を向いてあくびをした状態です。ここから、少しずつ変化させてゆくと面白いですね。

・筋肉の緊張
頬や胸、腹部の筋肉の緊張によっても音は変わります。リラックスしたり、硬くして試しています。

・姿勢
立ったり座ったりで音が違います。私は立ったほうが良い音がします。音の幅も広がります。
ひじの位置は、落としているよりもやや広げたほうがよい音です。背中を丸めたり伸ばしたりもします。

同じ音ばかりでなく、音階を順番に吹きます。そうすると、よく響く音と響かない音があるのに気がつきます。音階の途中で音質が変わる場所があるのにも気がつきます。そして、原因を探します。それが分かれば、幅広い音域で音を響かせることができるはずです。

こんな風に、たくさんのバリエーションを試して、自分のお気に入りの音を作っています。ケーナ奏者の河辺晃吉さんも、音作りのためにロングトーンの練習を勧められています。
(※3)

そのための最高のツールがあります。尺八奏者の方が作られた、運指チューナです。
(※2)
倍音のイメージは、活字で読んだだけではなかなか伝わりません。このスペクトラムを見れば、一発で理解できます。オーバーブローによるオクターブの跳躍も目で見て理解できます。絶対のお勧めです。ロングトーンの練習が楽しくなりますよ。



return home
尺八とあそぼ

(※2)運指チューナーというフリーソフトがダウンロードできます。これは、究極のチューナです。ツールバーのオーディオ表示からFFTを選ぶと、倍音の分布が分かります。また、現波形を見ることもできます。作者の方に感謝しながら使っています。


ケーナの先から、肺の底まで一本の管になるようにイメージします。実際の気管支がどのような形をしているのかが分かると、イメージしやすくなります。

(※1)メルクマニュアル
世界的な製薬会社メルクの医学百科事典。医師が使えるほどレベルは高い。
鼻とのどの構造

肺および気道上部
加齢・喫煙と呼吸器



気管支分岐部

(※3)河辺晃吉さんが、ご自身の掲示板で初心者の方にされたアドバイスです。
河辺晃吉ウェブサイト


早く曲を吹きたい気持ちは解りますが時には意識的にこんなふうにしてみるのもいいかと思います。
@一つの音、好きな音でいいですから自分の出したい音のイメージを持って吹いてみる。
A一つの音、好きな音でいいですから、このケーナはどんな音なのか、どんな音を出したいのか、得意なのかをイメージして吹いてみる。

時々こんな風に遊んでみるのもうまくなる近道かもしれません。(
掲示板 発言No798)