管楽器と声帯

管楽器吹くときは、、「肺から笛まで一本の管になるように」よく聞く話です。本当に気管は管になっているのでしょうか?これを真剣に調べた方がいました。神奈川の耳鼻科の先生です。笛を吹いている人の鼻の穴からファイバースコープを入れて観察したそうです。

面白いことに、奏者のレベルによって喉の状態が違ったそうです。初心者の場合は、声帯が完全に開いており、管状ですが、うまくなるにしたがい声帯が閉じてきて、上級者は声帯がほぼ閉じた状態になっていました。

上級者の喉は、けして管状ではなかったのです。とても衝撃的な報告です。ビブラートも声帯の開閉による空気の流量が変化することによっておきていることが、この観察で初めてわかりました。

ビブラートは、細かい振幅は、気管が緊張と弛緩を繰り替えして起こるもので、大きな振幅は横隔膜が起こすものだと思っていました。いまでも、そのように書いてある教則本はたくさんあります。大きいのも小さいのも、ビブラートはすべて声帯が制御しているとは、衝撃の事実です。

私なりに、この状態を感じられる実験をしてみました。

管楽器を吹いているようなつもりで、口をすぼめて腹式で圧力をかけながらトゥーと息を吐きます。そして、いきなり口をあけ息を開放します。そうすると濁音のついた汚い声がでます。これは、息を開放することで、閉じていた声帯が振動を始めたのでしょう。次に、唇はすぼめても、リコーダーを吹くようなつもりで、圧力をかけないようにしてフーと息を吐き、その後に同じようにいきなり口をあけ息を開放します。そうすると、ただ、ハーっと息が出るだけで、濁音のついた声は出ません。

たしかに、高いプレッシャーをかけた時には声帯は閉じています。向井先生の報告を、スコープなしでも確認することができました。

管のように、というイメージは喉仏までのようです。あごを引くことで気管上部の容積を減らさないように、というなのでしょうね。

参考

向井 將 楽器吹奏と声門の動き。 医学のあゆみ 125,447,1990 
この雑誌は医学雑誌なので、一般の書店では購入できません。医大の図書館で複写するか、医学文献のコピーサービスの会社に発注する必要があります。。.
 
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※1)Dr.Mukaiのホームペ−ジ
神奈川県で耳鼻科を開業されいている向井先生のHP「開業の経緯」の中に、管楽器奏者の声帯に関しての報告がある。向井先生もフルート奏者でもある