以下の文章を書いたところ、モンターニャさんが実際に4000mの高地で吹いてきてくれました。結果は、ピッチはほとんど変わらなかったということです。

SERRANITOさんから、その答えを教えていただきました。音速は温度により変化するが、気圧には関係がないというものです。

以下の文章の「空気の密度がx%下がると
音速は √1(1-0.01x)≒0.005x でX*0.5%早くなる」という部分が間違っていたわけです。

この文章は、公開されて6ヶ月ほどたちますので、しばらく間違っていたことを開示し、その後削除いたします。



南米のケーナを購入したらどうしても音が上がらない。これは自分の吹き方が悪いんだ。と思われた方はいらっしゃいませんか。私がそうでした。
さすがに本場の奏者は、違うなあと感心していました。それにしても半音は低すぎです。原因は他にあるのではないでしょうか。

まず、音の高さの要素を考えます。管長と内径、開口端補正値、温度です。このなかで、ボリビアと違うのは温度だけです。でも、温度だけではこの下がり方は説明できません。

温度に音程が関係するのは、温度によって音速が変化するからです。音速は次の式で表されます。v=331.5+0.6t (t=摂氏温度)この中には温度以外の要素が含まれていません。でも、なぜ温度が変わると音速が変わるのでしょう。

温度は空気の密度を変化させます。温度が上がれば体積が増え密度が減ります。
(※1)密度が減ると音速は早くなります。音速が変わることで音の高さも変わってきます。
空気の密度がx%下がると音速は √1(1-0.01x)≒0.005x でX*0.5%早くなります。このように、温度の中には、気体の密度という要素が隠されているわけです。

ケーナの有名な工房がたくさんある、コチャバンバ市の海抜は2560m高松市を海抜10mとして計算してみましょう。


ためしに、海抜0mの時の気温を26度に固定してみます。すると、海抜10mの高松市は気圧740.18hPa温度25.94℃ コチャは740.18hPa9.36℃となります。
この時の大気密度は、高松が862.12g/m3で、コチャは1163.41g/m3になります。高松は、コチャに比べてΔ34.9%空気が濃いということになります。これを先ほどの式に当てはめると、17.5%音速が遅くなることになりまので、、音が下がって当たり前です。
(※2)

実際には、コチャの平均気温は20℃で高松の平均気温は17℃です。ですから、温度による密度の変化分、変化率はほんの少し小さくなります。

高地で作られたケーナが低い音程になるのは、演奏者のせいでも、製作者がいいかげんにチューニングしているのでもないことが分かります。まじめに作ったケーナほど、日本に来ると音は下がるのです。。

音が上がらないと悩んでいる場合、そのケーナがどこで作られたか調べてみてください。高地で作られたケーナでしたら、演奏の技術でカバーするものではなく、歌口を切り詰めるのが正しい方法ではないでしょうか。。


 


 
return home
※2:大気密度の計算式
ρ=P/{R(t+273.15)}
P=気圧(hPa)ρ=密度(kg/m3)R=乾燥空気の気体定数(2.87), t=気温(℃)
(.上越教育大学HP:気圧の高度分布の計算プログラムが公開されています。

KENの縦横無尽::KENさんの旅行記と各種プログラムを掲載しています。高度・温度計算プログラムを無償提供してくれます。 )
※1:シャルルの法則
圧力が一定ならば、一定量の気体の体積[V]は、温度が1℃上昇するごとに、0℃の時の体積V0の1/273ずつ増加する

クラリネット総合研究所

とても個人作られているとは思えないクラリネットに関してのすべてが掲載されています。工学研究室の気圧でピッチは変わるの?の部分に計算式が掲載されています。

科学のつまみ食い
気圧でピッチはほぼ一定であることが書かれています